第79回独立展

2011年10月12日(水)〜10月24日(月)
国立新美術館

「ペパーミントラビー」F200号

【展誌エッセー】

 マツダクイックシルバーホワイトスペシャル缶

大久保 宏美

 思うように行かなくてもそれに付き合って楽しむ時がある。相手の出方を察して次の手を考えたりすることもある。絵を描く時のすべての材料への思い入れは、擬人化するほどに等しい。
 愛用のホワイト缶、そのままダイレクトに使うには手古摺る、このひと手間かけさせられる感が良いのかも。紙厚の雑誌に一瞬挟んで余分な油を抜き、大理石の上で地道に練り上げる時の至福。油臭の代わりにバニラエッセンスの香りが付いていたら間違いなく舐めているだろう。危険だ。
 この絵の具の乾き具合が私の絵の出来を左右する。乾かなくても乾き過ぎてもいけない微妙なイイ感じを常に判断して絵の具の変化に付き合い次の作業に進む。季節や天候で次の道は大幅に揺れたりする。晴れた日にはそんな駆け引きにも動じず私の超速描画スピードに裏切らずについて来る、そして絶妙な体制で待ち構える信頼できる憎いヤツ。